Daphne
ギリシャ・サントリーニ島は多くの観光旅行者が訪れる名所であり、Daphneは来場者が多く訪れる夏期間に設置された照明インスタレーション。何の変哲もなく長々と存在した白い壁面のトンネル空間は部分的に白い紙のパネルで更に覆った。対立する2つの白い壁面は徐々に季節とともに老いていきその環境の歴史と記憶と同化する。
トンネルの両出入り口にはカフェ・レストランという現代のソーシャルスペースが構えており、既存のトンネル空間はただの通り道にしか過ぎない。しかし、サントリー二島の住人にとっては頂上にある教会へ向かうための動線でもあり、高齢者のための休憩所として機能している。Daphneはこのトンネル空間はただのブランクスペースとして放っておかず、過去・現在・未来の時間軸を共存できるソーシャルスペースとして提案した。
トンネル出入口には足元に片端一列にパネルを設置することから始め、徐々にトンネル空間へ差し掛かると空間全体を覆う仕掛けを施した。真新しい紙のパネルで全体を覆わず、背後の既存壁面が時折見え隠れするようにパネルは星形に設定した。
日が暮れるとともに立体パネルの中に設置されたLED照明は灯され夜間も訪れる人々を魅了するソーシャルスペースへと変貌を遂げた。トンネル空間はただの動線としてではなく両端の出入口にある飲食店スペースの延長として機能できた。
サントリー二島の環境条件はインスタレーションの演出に重要な役割を果たしている。夏季の風や湿度、通行人の通る頻度は紙パネルの老化に影響を与え、その儚さは既存のトンネル壁面と雰囲気を共有する。あえてインスタレーション素材に紙を使用する意図には紙の老化プロセスを取り入れ、時間とともに素材の質感や色彩の品質の変化を表現することにある。
サントリー二島の永遠のイメージである青い海と白い壁面の建造物。特定の期間内だけでどのように島の歴史的背景を表現し間近で体験することで理解できる環境の儚さを物語れるか。一時的な状態を表現する素材の潜在的効果は、「過去」・「現在」・「未来」全ての要因が含まれる空間性を創り上げる。