House of Many Arches -アーチだらけの家-
House of Many Arches (アーチだらけの家)は神戸市にある築35年の木造住居兼事務所の改修計画。もともとは賃貸アパートを含む事務所兼住居として建てられたこの建物は、阪神・淡路大震災後に住居と事務所だけにの職住融合住宅に改築した。その後、建主の事情により業務を解散する運びとなり空家となってしまい、24d-studioは今後の職住融合住宅の在り方を再定義する方向性をとり更新することを図った。
調査の結果で耐震補強は勿論のこと、断熱、採光、通風などの環境設備面で不備があり、部屋の区分化が息苦しい雰囲気を与えた。開放的で快適な職住融合の生活スタイルに合わせるため、プロジェクトの課題はレイアウト全体を再構成して広々としたワークスペース、最大限の採光と通風を与え、耐震補強と断熱性能をアップグレードすることであった。
プロジェクトの重要なエレメントはアーチ開口耐力壁の導入となった。各アーチ開口部は計画的に配分されており、構造的な補強を可能にしつつ各部屋に空間的流動性を提供した。壁は一般的に各部屋の分割するものとして認識されているが、アーチ開口壁ではスペースが互いに溢れあうように仕組んだ。日常タスクの機能に応じて各部屋の収縮と拡張、スペース同士の折衝が発生する。
耐震補強一環として柱と梁の補強に加え束石を排除し、既存の布基礎をベタ基礎へ変更することで1階の天井高を増し、スタジオのワークスペースを開放的にした。事務スペースとワークショップスペースもシームレスにつなげることもできた。
スタジオの玄関口はミーティングスペースだが、照明デザインを展示するギャラリースペースにも変換できる。アーチ開口部は全体的な白塗装と対象に、淡色塗装とし空間の特徴を強調しつつ、隣接する部屋とのユニークな関係を築いた。ミーティングスペースとワークスペースを区分化したアーチ開口壁は、ビルトイン収納と展示台としての機能を持つものもある。ワークショップ手前のアーチ開口壁はプライベートなワークスペースとなる。
住居空間へのホワイエはスタジオと北側の外部廊下よりアクセスが可能になっており、吹き抜け階段の手摺面は2階アーチ開口部とリンクさせ、各階との関係性を示唆している。アーチ開口壁は、既存丸太梁までの高さに設定することで、新と旧のエレメントの融合を図り天井高をより拡張した。2階住居空間は全体的に自然光で溢れ、見渡し良い日常風景を生む。異様ながらも調和された空間関係が表現されるようになった。
2つのバルコニーはイエローとマゼンタの鮮やかな色彩を取り入れた。これらの独特の視覚効果とその輝度により、室内への明るい雰囲気を与ることができた。日常のなかの非日常、それがいつしか暮らしのニューノーマルへと変貌する。